私は「運動が続く人」ではありませんでした。
運動不足を自覚してジムに通おうと決意するところまでは、これまでも何度もあったんです。
でも、その先が続きません。
入会して、最初はちょっと行って、気づいたら行かなくなって、月会費だけが静かに引き落とされていく。
退会しては、また1年後くらいに別のジムに入会する。
そんなジム人生を何度も繰り返してきました。
よりにもよって、ゴールドジム
そんな私が選んでしまったのが、ゴールドジムでした。
家から最も近く、仕事の帰り道にあり通いやすかったからです。
ゴールドジムってどんなジムかご存知ですか?
私は知りませんでした。
これまで通っていた、エニタイムフィットネスやチョコザップと同じ感覚で見学に行ってしまいました。
一歩足を踏み入れた瞬間、思いました。
「……別世界すぎる」
そこは、筋肉工場でした。
ムキムキの人たちがタンクトップで歩いていて。
フンッ!フシュー!と息を噴出する音があちこちから聞こえて。
今まで見てきたどのジムとも世界観が違いすぎて。
この空間に自分が存在していること自体が、もう面白い。
面白いと思ってしまったらすぐ着手してしまうのは、私の悪いところであり良いところ。
やるなら極端なことを選びたい性格。
見学したその日に入会しました。
鏡に向かってポージングしながら筋肉の育ち具合を確認する人たちの隣りにいる、私。おもろいて。
ゴールドジムはこれまで通ってきたどのジムよりも混雑していましたが、どのジムよりも静かでした。
雑談や談笑している人はいません。
マシンのガシャンガシャンという音と、荒い息づかいだけが聞こえます。
そこには、ただまっすぐ自分の体と向き合うだけの時間がありました。
その場にいる自分が面白すぎて、人生初、ジムに1ヶ月通うことに成功しました。
何を大袈裟なと思うかもしれませんが、三日坊主常習犯の私にとっては、自分史上初の快挙だったんです。
マラソンという、ありえない選択肢
たった1ヶ月。
されど1ヶ月。
「ジムに通っている」という事実が、私の中の意識をじわっと変えました。
運動欲が芽生えてきたのです。
私の仕事は整体師。
仕事をしていると、お客さんと運動歴の話になることがよくあります。
「普段、どんな運動されてますか?」
「おすすめの運動ってありますか?」
そう聞くと、やたら多い答えがありました。
「マラソンです」
この時点では、正直に言ってました。
「いや、それはないな」と。
走るの苦手だし、継続もできない。
長距離なんて競技を選ぶ人の気が知れない。
フルマラソンなんて別世界の話だと思っていました。
フルマラソンという「称号」
そんなある日、こんな話をしてくれたお客さんがいました。
「継続した運動歴はないんだけど、30代のころに一度フルマラソンに挑戦したことはあります」
またマラソンか、と思いつつ聞き返しました。
「なんでいきなりフルマラソンに挑戦しちゃったんですか?」
すると返ってきた答えが、妙に刺さったんです。
「人生で一度でも、フルマラソンを完走したっていう称号が欲しかったんです。
この称号を持ってると、相手が勝手に良い評価をしてくれるんですよ。
根性があるとか、挑戦心があるとか、継続した努力ができる人なんだな、とか」
その話を聞いた瞬間、心の中で思いました。
「え!めっちゃいいじゃん!私もその称号ほしい!!」
そしてふと、私ほど運動に縁のない人間がフルマラソンに挑戦するということ自体、すごく面白く感じてしまいました。
私はノリと勢いで極端な選択をするのが大好きです。
エニタイムフィットネスよりゴールドジム。
ハーフマラソンよりフルマラソン。
気づくと、初心者からフルマラソンに挑戦した人たちのブログを読んでいました。
よく見かけたのは「3ヶ月」という文字。
初心者でも3ヶ月でフルマラソンが完走できる。
そんな情報が私の中に入ってきました。
今思うと、私はそこに書いてある言葉の意味がわからないほどの初心者でした。
「3ヶ月で完走」した彼らの基礎能力を理解していなかったのです。
ブログの彼らは、最初からキロ7分の走力だったんです。
「キロ○分」の言葉の意味も知らず、愚かな私は「3ヶ月あればフルマラソンは完走できる」と思い込みました。
メリットしかなかった
もしフルマラソンに挑戦したら。
気分が盛り上がってきた私は、挑戦することで得られるメリットを挙げ始めました。
- 運動習慣が身につく
- 体重が落ちる
- 筋肉がつくから冷え性も治る
- 貧血が治る(治さざるを得なくなる)
- 姿勢がよくなる(よくならざるを得ない)
- 睡眠の質改善
- 継続できないというコンプレックスからの脱却
- 完走した人という称号を得る
- 新しい領域の(マラソン)仲間ができる
- ジム1ヶ月通っただけでフルマラソンに挑戦しちゃった私が、完走しちゃったら次なにを目指そうとするのか楽しみ
どう考えても、挑戦しない理由がないと思いはじめてしまいました。
「まずはエントリーしちゃうのが吉」
その後、別のお客さん(フルマラソン経験者)に、この話をしました。
すると即答。
「初心者なら、湘南国際マラソンがいいよ。アップダウン少なくて走りやすいし。
まずはエントリーしちゃうのが吉。自分も毎年そうしてる。
エントリーしたら逃げ場がなくなるし、そこそこ金額もするし。
ただし、枠が埋まるからエントリー開始日はチェックした方がいい」
そう言って、その場でスマホを取り出し、調べてくれました。
「……エントリー開始、今夜だって」
え。
今夜!?
運命じゃん!?
私の頭には「3ヶ月あればフルマラソンは走れる」という言葉。
そしてこのエントリー時点で、8ヶ月前でした。
8ヶ月あれば余裕じゃん、と。
あまりにも大馬鹿者。
これだから運動経験がないやつは考えが甘くて困ります。
勢いでエントリー
その日の仕事終わり。
私はすすめられたランニングシューズ屋さんに直行しました。
店員さんに、こう伝えました。
「初心者なんですが、エントリーする覚悟があるか確認しに来ました」
今思えば、意味の分からない相談です。
でも、店員さんは真剣に話を聞いてくれて、
シューズの説明をしながら、背中を押してくれました。
店員さん「まだ8ヶ月もある!いける!」
ですよね。
プロが言うなら間違いない。
内心にっこりでした。愚か。
2025年4月5日。
エントリー開始の20:00ちょうどに、勢いでエントリー完了。
こうして私は、
「走れるかどうか」より先に、
「フルマラソンに出る人」になってしまったのでした。
でもやるからには本気です。
自分の性格は自分が一番分かっています。
挑戦の逃げ場をなくすため、私はエントリーしたことを周囲に言いふらしまくりました。
そのくらいしないと、サボるからです。
こうして、浅い動機と軽いノリのまま、この挑戦ははじまったのでした。
